紙の海にぞ溺るる

或は、分け入つても分け入つても本の山

目録を取り逃す

 フソウ目録が届いた。

 私の住む一帯は郵便の速い地域であるらしく、全国数多生息する古本鬼たちが玄関先で待ち構えている目録を、昼過ぎには受け取ることができるのだ。ところが私はふだん夜中に活動をしているので、最速でそれを確認しようとすれば、必然、睡眠のリズムを崩すよりほかなくなってしまう。コレクターの先輩曰く「しかしその好条件にあるなら、多少無理してでも待ってた方がいいのでは」とのことだった。

 もちろん私とて目録は早く見たい。先着順という比較的珍しい形式のフソウ目録は、早く注文しさえすれば確実に欲しいものを手に入れることができるのだから嬉しい。抽選式であればそうはいかず、そもそも人気の品は競争率が高くなろうし、「厳正なる抽選」で自分がどれだけ善戦するか見当もつかないのだ。これまでに私は、そうしたフソウ目録の恩恵にあずかる形で、時として他のコレクターを押しのけ押しのけよい本を安く手に入れてきたと思っている。

 だが、そう上手くゆかぬのが世の理である。この頃、困憊して夕方まで惰眠を貪った日に限って、無常なる目録が郵便受けに投函されているということが続いた。今回も多分に漏れず、夕方起き出してメールを見ると、蒐集仲間から到着の一報が入っているのに落胆した。

 

 ところでこのフソウ目録、最近の私の注文傾向は言うなれば「未知なる本」である。未知と大仰に言ったが、単に私の知らない本、あるいは知っている本でも何かしらヴァリアントが認められそうなものだ。署名入りなどもこの例であるが、限定版とか異装本とか、この目録でなくては探し出すのも困難な本がけっこう頻繁に見て取れて飽きることがない*1

 初めのころは相場より安めの「探求書」注文したものだったが、現段階で探している本は取り立ててない。即売会のたたき売り価格で買うのをメインとしていることもあって、最近は注文控えが続いている。

 

 で、今回は1冊、ダメもとでfaxを入れておいた。珍しいのかどうかわからないが、少なくとも私は聞いたことのないヴァージョンの本だ。もし売り切れでも、書誌的に確認できただけよかったというべきであろう。

 

(10月21日追記)

 注文品が無事届いた。タイトルとしては平凡な本であるから注文がなかったのか、ともかくも僥倖である。期待通りの珍しい品だと思うのだが、私の蒐集対象ド真ん中なこともあり、徒に競争率を上げたくないので、公開はもう少し調べが進んでからとしたい。

*1:時たま発行される写真版の目録が貴重な資料であることは言うまでもないが、私の場合、文字刷りだけのものも座右にまとめてあって、折に触れては字引のように参照するようにしている。