紙の海にぞ溺るる

或は、分け入つても分け入つても本の山

旅ゆけば漫画

 大阪2日目。どうにか余裕をもって2泊の旅程を組んだのだが、朝4時に目が覚めてしまうのは普段のガタガタな生活リズムのためであろう。逆に言うと、多少は無理の利く齢のうちに動けて良かったというべきか。

 

 ふだん私は出かけるとき、大抵2つ以上の目的地をもっている。たとえば図書館とか昼食とか、1つしか行き先がない場合だと、どうにも動こうという気になれないのだ。それはこの大阪旅行に関しても同様で、ホテルや新幹線を予約するまでにはいろいろの葛藤があった。

 昨日の文庫カイなども大きな目的のひとつであることに相違ないが、一番はじめの、つまりは大阪に行こうかと思い立ったきっかけは、本日訪うた「まんだらけグランドカオス」にあった。

 

 詳細はこちらをご覧いただければ早い。好美のぼるの漫画が復刻されるというのである。特別思い入れの深い作家というわけではないが、稀覯本が出るというのであれば黙っていられない。

 そも、いわゆる貸本漫画というものについては、同人的に小数部の復刻が出されるたびに購入し、手に入る範囲で楽しんでいる。今回のは「怪奇貸本奇談シリーズ」の5番目の本で、これまでの4冊もどうにか全て揃えている。

 まんだらけが公式に出すものであるから、店頭販売のあとはもちろん通販もなされる。が、前回の菅島茂『奇音』が出されたときには残部が少なかったために抽選販売となり、涙をのんだマニアもいたとかいうことだ。その二の舞を演じるのは御免こうむりたいため、大阪行きを決意した次第である。

 

 で、無事購入したのがこちら。

好美のぼる『耳売り少女』まんだらけ)平30年9月22日カバー限250部うち第130番本 4320円

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 このシリーズ、毎回テカテカのカバーに金銀の箔押しを光らせていて、言ってしまえばちょい下品なテイストが貸本らしくて良いと思う。限定番号入りというのもマニア心を擽るというものだ。

 250部刷った内、店頭販売は150部ということだったが、私の見た範囲では50部も捌けていなかったようだ。並んでまで入手しようとする、あるいは遥々大阪まで来て並べる暇をとれるマニアが少なかったということだろうか。30日までは店頭販売のみで、その後残部は通販の抽選販売にまわす由。

 部数の少なさ、内容の充実などの理由から、後々高値で取引される本であることはわかっていたが、私は複数冊買うことをしなかった。そもこれ以上帰りの荷物が増えるのは厳しいし、譲渡の予定がないのに残部数を圧迫するのはモラルに反していると思ったためである。

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 「怪奇貸本漫画シリーズ」の過去のラインナップを見ると、今度の好美のぼるというのは比較的メジャーな作家であることが分かる。こうやって揃えてしまっているものだから、今後もゆめゆめ買い逃しできぬと思わざるを得ない。

 

 購入した後は、その道の蒐集家であるナンブ寛永氏のトークショーがあるというのでこちらも覗いた。「トークショー」というから、なにか舞台が用意されていてマイクを使って、というものを想像していたがさにあらず。氏と聞き手の店員とは店のカウンターに立って地声で話し、私たちは突っ立ったまま耳を傾けなくてはならないのだ。せっかく呼ぶのならちゃんとした場所用意すればいいのにと思うし、頻繁に店内アナウンスが入るので聞きづらいことこの上ない。

 といっても、内容自体は勉強になった。実は好美のぼるもそんなに読んだ経験がなかったため、何を読むべきか、どれを買っておくべきかという指針が見えたし、図らずして私の蒐集範囲=文学よりの雑誌への投稿があることも知ることができた。まあ置く場所のこともあって、漫画を集めるということは避けたいところだが、いちおう頭に入れておきたい知識だ。

 しかしまんだらけのイベントは、毎回見通しの甘いところがあるというか、運営のための会議ちゃんとやってるのかと思うことが多い。前回『奇音』を購入した「資料性博覧会」でもスタッフが待機列をまったく捌けていなかったし、今回のトークショー、およびちらっと覗いた「資料性大阪」においても、いやそのやり方はどうなのよという点が散見された。企画や出版自体は魅力的なのに、実に勿体ないことである。

 

 まんだらけ店頭でも数冊購入したが、ついでにこれも載せておく。

永島慎二『シャボン玉天使』永島慎二少女漫画選集製作委員会)平24年6月10日函限300部 1296円

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 存在は知っていたが、復刻で追っているのは主に怪奇系の漫画だしと購入を見送っていたもの。ちゃんと特典のペーパーまで付属して安かったので買っておく。定価は3500円+税。涙の出るような可愛いキャラクターで、セリフは手書きのままというのも嬉しい(が、若干読みにくさもある)。

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 その他同人誌もいろいろ購入して、帰りがけにお土産を買ってホテルへ戻った。大阪らしい観光もわずかにしているけれど、ブログの趣旨とはずれるので割愛する。

 ともあれ、目当ての品は買えたし、新たに古書店を知ることができたしと充実した旅であった。近いうち、また用を見つけて関西方面へ来られたらと思う。