紙の海にぞ溺るる

或は、分け入つても分け入つても本の山

朦朧の収穫

時間を切り売りしていくよりほかに生活を立てる術を持たない下等遊民とはいえ、さすがに余裕がなさすぎる感もある。今日のシュミテンに並ばぬわけにはいかなかったが、行きの電車ですでに眠気に襲われての参戦となった。 到着は9時20分くらいか。ざっと25人…

タイミングで幸運を掴む

マドテンである。 が、来週にはシュミテンも控えているし、今月はちょっと余裕もないため、思い切って初日に並ぶのはやめにした。下等遊民としては失格の烙印を押されてもゆめゆめ文句は言えぬ体たらくだ。 で、2日目の11時くらいに悠然と会場入りしたのであ…

閑暇の葉月

まあ健康的と言えば健康的なことではあるのだが、8月はほとんど古本屋をめぐる暇がなかった。また目ぼしい即売会も見受けられなかったため、駆け出しのコレクターといえど少しくフラストレーションみたようなものがたまってしまう。 来月はシュミテンもマド…

7月の後悔

なかなか熱気の訪れない7月であった。七夕古書入札会とかシュミテンとかの恒例行事に加え、池袋にも行ったものだから、散財に次ぐ散財である*1。 そんな中にあって、実は7月冒頭、ネットに相次いで良品が出品された。どちらも近代文学コレクターの端くれとし…

このごろの均一

忙しさに拍車がかかり、といって何を目指しているわけでもなく、ただ盲目的に動き回っている日々である。 そんな毎日にあって、疲れをいやそうと思ったときに、よりどころとするのは古本であり古書店であり古書展なのだ。本の並びを眺めているだけで一時は疲…

雨の駆け出し

異変に気付いたのは最寄りの駅に着いた直後であった。 ふだん利用している京王線の某駅、改札からやけに長い列が伸びている。路線が1本しか通っていない小さな駅であるから、これは明らかに異常な光景だ。嫌な予感を胸に改札前へ向かってみると、果たして「…

笙印の旧蔵書

実に忙しい1週間を過ごした。 元より規則正しい生活など望むべくもない、下等なる遊民生活を送っているとはいえ、ここ数日はうまく眠る時間を確保できぬ日が続き、満身創痍の体であった。 それでもマドテンに行かない選択肢をとれば、後から省みて激しく後悔…

勘違いフライング

どういった思い違いなのか、自分でもよく分からないのだが、今日は朝の通勤ラッシュを心配せずに古書会館へ赴けるものという意識が働いていた。むろん、これは気のせいに過ぎず、中途半端な時刻に家を出てしまったが故に、堅実なるサラリーマンの方々と鮨詰…

圧倒的百均棚

フソウ事務所の百均棚の存在を知ったのは、某版道さんのツイートからであった。画像を見やると、とても均一棚のものとは思えぬ良書が整然と並んでいる。 このツイートを受けて悲鳴を上げたのは、第一には遠方のコレクターであり、第二には古本屋だ。某店の店…

古本蒐集の始まり

GWはあまり本を買えそうにないので、筆の向くままに思い出を書いてみたい。若い蒐集家の記録として、集めだしは語るべき大切なポイントであろうが、なにしろ記憶が曖昧なので、一切の価値が期待できないことをここに断言しておく。 * * * * 初版本蒐集家…

近場をパトロール

三鷹駅近くに「輪転舎」がオープンしたのは先月末のことであった。さすがに中央線は古本屋が多く、またその固定ファンも多く生息している地域であるから、開店当日は書痴の面々でごった返したという話をブログやツイッター上で見た。 元はササマで働いていた…

悩み悩んで

春とは思えぬ凍てつきを見せている東京だが、桜は辛うじてその花弁を支えているようだ。葉桜まじりになりながらも、三段染めみたような輝く色彩は、満開のそれとはまた違った見どころがあるように思う。 なんて風流人ぶってみたが、実のところ朝からの寒さに…

無沙汰の突撃

久々のシュミテンである。ある筋からのタレコミによれば、今回のフソウさんの棚には著名な児童文学研究者の旧蔵書が並ぶとかいう話であったので、そんな好機はゆめゆめ見逃せぬとばかり、勇んで会場へ向かう。 しかし、この1週間マトモに睡眠をとれていなか…

花粉か眠気か

とうとう花粉の季節がやってきてしまった。ここ数日、どうにもうまく眠れなかったこともあって、花粉のためか眠気のためか判別のつかない目の違和感を抱えつつ、たまには気分を変えて高円寺へ赴く。 今日は愛好会の2日目。学生のとき以来だから、西部会館に…

復活の訪問

久しぶりにフソウ事務所へ行った。年が明けてからは初であるから、ずいぶんと無沙汰してしまったことになる。入るとすでに書痴の面々で賑わっていたが、「あれ、復活したの」と、すっかり引退したものと認識されていてちょっと恐縮したことであった。ともあ…

リハビリがてら大物

ずいぶん久しぶりの神保町という心持である。前回のシュミテンに訪わず見送ったところ、今日も今日とて朝から並ぼうという気が起こらなかった。考えてみれば、この寒い中、待機時間はオジサンたちの列に加わって立ち続け、開場してはもみくちゃにされながら…

厚着本あれこれ

池袋での古本まつりを初めて覗いたのは2年ほど前のことだったろうか。たまたまその方面に用事があり、何気なく会場に足を運んだのだった。その頃はまだ蒐集歴も浅く、漱石のイタミ本を安く拾えて嬉しかった記憶がある。 以降欠かさず並ぶようにし、そのたび…

雪を避けつつ

夕方から雪の予報が見え隠れしており、となれば不要不急の外出は避けるというのが、凍結に不慣れな関東人にとっては賢明な判断であろう。しかしながら私こと下等遊民は、この頃の引きこもり生活にやうやう嫌気がさしつつあったので、ちょっと近文に出掛けて…

欠席の口上

近代文学を蒐集している書痴にとって、今日のシュミテンが実質的な新年の幕開けだったのではないか。12月のマドテンから1ヶ月しか開いていないわけだけれども、年末年始はごたごたするものだから、何となく体感として久方ぶりの古書展という感じがする。 し…

寒波の彷徨

このところ一切の意欲が減退しているから、休日であっても無目的的に街を徘徊するばかりで、非生産的であることこの上ない。そも満足な休みをとれていないということもあるが、爆買いで知られる(?)私が年明けからこの日まで本を買わなかったくらいなのだ…

量の年から質の年へ

下等遊民たる私にも、他の方と同様に新年が来た。といって暦とは一切関係を断った生活をしているため、感慨らしい感慨はないのだが、まあ区切れでもあるしと2018年で買った本のリストを整理している。 昨年の7月に、「上半期の5冊」と題して特に優れた収穫を…

年末の彷徨

前回のエントリで「どうにも気が乗らない」というような心情を書いたが、その鬱屈した状況から抜け出せずにいる。下等なる遊民である以上、多少の体力的な無理を強いられようとも、文化的な活動を控えてはならないと思う一方、気力がそれについていかないの…

気が乗らなかった日

書架らしい書架を持たずに蒐集を開始してしまったため、ほとんど本を置くところがないまま漁書に励んでいる。本のためを思えば、むろん好ましい状況ではないし、精神的に参ってしまう環境でもある。 そんなわけで、いよいよ生活空間が逼迫していたからだろう…

100均周遊

忙しい、と偉そうなことをのたまえるようなヤンゴトナイ身分ではないのだが、貧乏暇なしとは正にその通りである。睡眠もそこそこに出掛け、文化的活動に興じたかと思いきや、その間隙を埋めるのはやはり本。 いちおうの目的は日本近代文学館である。今週まで…

市場で買ってもらった本など

もう2か月も前になってしまったが、遠路はるばる大阪まで出向いたのは、揃えている復刻のシリーズが販売されるためであった。漫画だから出た分についてはきちんとすべて読んでいるものの、貸本作家について詳しいというわけではなく、むしろ未知の作家と出会…

大収穫祭

今日、11月23日は勤労感謝の日と呼ばれている。「感謝とか言ったってこちとら祝日も仕事だ」なんて人も少なくないだろうが、元は宮中祭祀の新嘗祭だそうだ。ともあれ下等なる遊民は暦の日付が赤かろうが白かろうが全く関係なく、徹夜明けの体で神保町へ向か…

小江戸から深川

ここ数ヶ月の浪費がたたり、まさに爪に火をともさんばかりの節制生活を送っているのだが、どうしても行っておきたい特別展があったので川越へ。 川越市立美術館は、ちょっと前に小村雪岱の展示+講演会で訪うて以来である。広大な展示スペースを有しているわ…

徳永直『太陽のない街』

フソウ目録の注文品が届いた。相場からすれば安い方だと思うのだが、なにしろプロ文を好きこのんで集める人は多くないようだから、夜分のFax注文でも無事に残っていたのである。 ●徳永直『太陽のない街』(戦旗社)昭4年11月30日初, 柳瀬正夢装 6000円 イタ…

海野十三『少年探偵長』

たまには読んだ本についても書いておかないと、買ったらハイおしまいで死蔵させてばかりという印象を与えかねないので、ちょっと書いておく。 海野十三は、周知のとおり日本のSF小説の祖と見なされている作家である。厳密にはもちろん、海野以前にSFらしきも…

古本ドラフト争奪戦

朝はどうにも動けなかったが、昼から古本まつりへ向かい、しつこくS林堂に詰め掛ける。もう単行本の補充はないとのことなのでちょうどよく、全体に思い切った値下げがなされていた。 ①高浜虚子『虚子句集』(植竹書林)大4年10月24日 500円 今まさに文アルで…