紙の海にぞ溺るる

或は、分け入つても分け入つても本の山

埋め草の古書展

1年前あたりのマドテンがすでに懐かしい。申し訳ないことではあるが、もう長いことこの古書展でハッスルしていないような気がする。 アキツが不在というのがまず大きく、近代文学の量が半減してしまったのは痛恨で、更に蝙蝠の時折見せるフィーバー状態も拝…

葉桜を横目に

どうもこのごろ腰の調子が良くない。若い身空で何を、と思われる向きもあるだろうが、いわゆる腰痛というより坐骨神経痛を併発していて、そちらの痛みの方がしんどく感じられる。立ちっぱなしの労働にくわえ、趣味の世界では重たい本を抱えているのだからさ…

宣言下の大収穫

ナントカ宣言はまもなく解除と相成るらしいが、これが奏功するかと言うとあまり効果は期待できないし、そも宣言じたい、慣れきってしまった日本人にとってみればちょっとしたお小言に過ぎないのではないかという気もする。 そんな中にあって久々のシュミテン…

池袋で雪岱を買う

久々の古書展という心持である。西部や南部ではちょこちょこ開催されているらしいのだが、わざわざ足を運ぶ暇もモチベーションもなく、シュミテンとマドテンが中止となったために、今年に入ってから古書展の朝に並んだのはこの日が初であった。 しかし10時開…

年始の注文品、数題

更新頻度がかなり落ちてしまったが、本を買う速度は徹底的に加速している。2020年中に購入した冊数は1057冊となり、過去最高数を記録した。平均額が714円、中央値が110円であることからわかる通り、いい本をしっかりした値段で買うというよりも、安物ばかり…

2包みの本と二笑亭

ふと思い立って検索してみたら、練馬区立美術館で開催の「式場隆三郎展」の会期が終わりかけていると分かった。ゆめゆめ見逃せぬ展示とはわかっていながら、足を運ぶのが億劫でここまで先延ばしにしてしまった己の怠惰を嘆きつつ、それでもマドテンの1日目に…

なおも2日目の収穫

シュミテンでは買いに買った。コレクターの先輩方や某通信編集長などにも「買うねぇ」と声をかけられつつ帰ったのだが、それはそれとしてフソウ事務所にも定期的に伺いたいというものである。 本を買うため、というよりも、サロン的な事務所に訪い、諸先輩方…

暖冬の明治本まつり

東京での感冒罹患者が増えに増えているなか、界隈ではシュミテンの開催が危ぶまれていた。この半年超の流れを見ていると、数日まえに急遽中止が決定、というのも決してありえない話ではないのである。 懸念を抱きつつも神保町へ赴くと、9時前だというのにす…

お慰み神保町

例年ならば古本まつりの時節である。ここ数年は朝一にS林堂のワゴンに詰め掛け、1戦終えた後は特選になだれ込み、あとから靖国のワゴンを冷かして廻るのがお決まりとなっていたわけだが、本年はかなり早い段階から中止が決まっていた。 すずらんのブックフェ…

夢を求めて神保町へ

古本仲間からのタレコミがあった。曰く、「フソウ事務所の棚が新しくなっていて、アレとかコレとか、良い本がリーズナブルな価格で出されている」というのだ。土曜日を休みにすることはどうにも叶わなかったが、それを聞いて尚足を運ばないのはコレクターの…

シュミテンに喉の渇きを癒す

感冒下にあって2度目のシュミテンである。先週の例に倣い、休みを取らずに睡眠不足の体に鞭打って神保町へ向かう。早めに行って9時くらいに整理券を受け取ろうと思ったのだが、列が伸びるばかりでなかなか扉は開かなかった。前回ので効果がイマイチだったか…

空振り、豪雨

うっかり休みを取り忘れたマドテン当日。ふと、休日でなくとも、早めに切り上げさえすれば仕事と仕事の合間を縫って神保町詣でが叶うのではないかと思い立った。ただでさえ下賤の身の上では日々のストレス甚だしく、古本で少しでも癒しておこうという算段で…

猛暑の彷徨

やりきれない暑さである。ふだんから夜型一辺倒の生活をしていることもあって、気温の高さというよりは瞳をあぶるような日差しの鋭さに参ってしまう。サングラスが欠かせないのはもちろんとしても、人のまばらな外を歩く間はマスクも取り外すようにした。熱…

西武を目指し西口へ出る

池袋駅周辺の地理は非常にわかりづらく、とりわけ東口に西部、西口に東武があることは土地勘のない人間にとって非常に難度の高い配置とおなじみである。 稀代の方向音痴である私だが、上記の知識は頭にあったので、これまでに出口を間違えたことはなかった。…

ミシン目のついた整理券

前回のシュミテンはギリギリの開催であった。あの直後にナントカ宣言が発令され、古書展はおろか、業者市まで中止と相成ってしまったのは、コレクターにとって悲痛以外の何物でもなかった。 あれから数か月を経て、都内の状況は再びあの頃に逆戻りの様相を呈…

宣言解除の鉱脈

「日本の古本屋」を見ていると、ある店に特定の傾向を持った蔵書群が入荷したのがわかってくることがある。それが私の蒐集範囲であれば、経済的問題に抵触しない範囲でゴッソリ買い占めることになるのは必定と言えよう。こうした収穫の見込める品ぞろえを、…

巣籠り直前、およびその最中

業者市も自粛の憂き目を見、マドテンも中止となってしまった4月。歴戦の書痴たちの落胆たるや並大抵のものではない。 かくいう私も古書展の不足に日々嘆息を漏らしつつ、パンのための労働ばかりを続けている、――と言いたいところだが、実のところこの下らぬ…

或るパンデミック間際

都内は混乱に満ちた。ここ2ヶ月のマスク不足、世界各国でのパンデミック及び医療崩壊を目の当たりにしてはいたが、されど認識としては対岸の火事でしかなかった。それが都内での「外出自粛要請」という形で、我々一般市民に影響してくることとなったのだから…

感冒流行下の収穫

マスク買い占めの第一波が訪れたのは1月末の事であったと記憶している。それから2ヶ月が経ってコロナウィルスの猛威は留まるところを知らず、むしろ物資不足が日常的な問題となりつつあるあたり、スペイン風邪の頃からの進歩を感じられない。未知のウィルス…

東横日和

東急東横の閉店が大々的に告知されたのがいつだったか、ともあれ記念の小展示やら思い出の募集やらにより、往年の渋谷利用者間でノスタルジックな盛り上がりを見せているようだ。 私は世代的に、百貨店の記憶はほとんど持ち合わせていない。幼少期などは連れ…

思いがけず探求書を

マドテンに朝から並ぶのは実に久々である。特選を抜きにすると半年以上の無沙汰ではないか。とはいえ、池袋でも随分買ったことだし、焦らず悠然たる足取りで9時40分すぎに列に加わる。ギリギリ最下層の最後尾からのスタート。 まずはいつものとおりにアキツ…

遅刻の池袋

池袋三省堂の古本まつりは、初版本蒐集を始めたころから行くようにしている催事のひとつで、行くたびになにかしら面白いものを拾えている印象である。それというのも、普段の店頭に近代の本を並べている印象のないニワトリが、やたらに近代のいい本を、それ…

明けて新年の収穫

図らずも久々の更新となった。 忙しい日々の中で、むろん古本だけは辛うじて買い繋いでいるものの、先月のマドテンも銀座松屋も欠席し、まだまだ古本者としては尻が青いことを露呈させるばかりの年末年始であった。 で、神保町それじたいは久々でもないが、…

冷たい雨を歩いて

シュミテン。しかし折悪しく雨であった。またようよう訪れた寒気が本格化しだしたところでもあり、寒いことこの上ない。 コーヒーを飲んで暖をとったのち9時半ジャストに到着すると、すでに列は開館の中に引き込まれていた。だからというわけでもないが、ふ…

南部から横浜

夜通し活動し、およそ酩酊に近い状態で迎える朝はいつものこと。しかしどうしても行きたい展覧会があるので、カフェインを過剰摂取の上、都心へ向かう。 ここで我が事ながら狂っていると思うのは、ちょうどユーコカイが開催されているから寄っておこうと途中…

風邪ひきのお祭り9日目

いちおう言っておくと、書痴のはしくれとして3日目の日曜にも古本まつりへは赴いている。飽きもせずにS林堂へ詰め掛け、『少年小説大系』の持っていない号をゴッソリと購い、さすがに持っては帰れぬと配送無料券の恩恵に浴することになった。 まあそれについ…

風邪ひきのお祭り2日目

2日目である。 去年であればS林堂の2日目に行って、急ぎ足にブックフェスティバルへ向かう、という順路を辿ったわけだが、今回は前日の雨によって青展は「初日」。やはり「2日目」よりも人は集中してくるのであった。 私はというと、早めの9時にワゴン前へ陣…

風邪ひきのお祭り1日目

古本まつりの時期である。 折悪しく喉をやってしまい、気管支やら洟やら、できれば外出は避けたいくらいの満身創痍の日々が続いていた。 また今年の初日は大雨。こと昼ごろの豪雨ときたら、先の台風もかくやと思い返すばかりの壮絶な降り方であった。 当然、…

還元祭

キャッシュレスの時代である。私は現金でチマチマと支払いをするのが嫌いなので、常に3-4のカードなり支払い手段を持ち歩いていて、それを使い分ける形で日々の買い物を済ませている。 ところがどうにもキャッシュレスで対応できない支払いというものもいく…

蝸牛露伴(幸田露伴)『葉末集』

シュミテンの2日目に行った。初日で大収穫=大散財を経験し、もはや落ち穂すら拾うだけの余裕を持ち合わせてはいなかったのだが、通りかかっては寄らなければ末代までの名折れである。 2日目の列は如何ほどかと会場5分前の古書会館を見てみると、なんと待機…