紙の海にぞ溺るる

或は、分け入つても分け入つても本の山

お祭り3日目

当初の予定では、今回の古本まつりへ詣でるのを2日間に限ることとしていた。それは休みの都合でもあったし、また自分の浪費を諫める意味でも、足繁く神保町通いをするのは避けようとしていたのだ。が、ちょっと約束ができたのを幸いとして、午前中だけ軽く覗…

お祭り2日目

古本まつりの2日目にして、ブックフェスの初日でもある。昨年は青展を真剣に見たりはしなかったので、気になっている出版社のブースに朝から詰め掛け、研究書の類をバカ安価格で入手したものだった。 今回はと言うと、さすがに昨日のS林堂の魅力にあてられて…

お祭り1日目

年に一度の神田古本まつりである。ふだんは煤けたオジサンが徘徊する場所として知られる神保町も、この期間だけはなんとなく界隈が華やいで、若い本好きの姿も多くみられるから新鮮だ。 むろん古本者としては朝から赴かなくてはならない。当初の目当ては、ベ…

目録を取り逃す

フソウ目録が届いた。 私の住む一帯は郵便の速い地域であるらしく、全国数多生息する古本鬼たちが玄関先で待ち構えている目録を、昼過ぎには受け取ることができるのだ。ところが私はふだん夜中に活動をしているので、最速でそれを確認しようとすれば、必然、…

美装幀三昧

某氏から連絡があり、曰く「ムシャ書房の棚にいい本があるよ」とのことであった。 ムシャ書房というのは、ふだんから色々ご教示をくださっている先輩が先ごろ開業した古本屋で、先月ついに古書通信誌上で目録がお目見えしたところであった。事務所自体も近々…

要る本だけを買いに行く

行きたい特別展があったのだが、昨日は体育の日。忌々しい休日営業のために、博物館は軒並み本日休業であった。このことに気づかぬまま休みをとってしまった私は、寝不足の体を引きずって、取りおいてもらっている本を回収しに行くことにした。 ①蜂須賀正氏…

上野をはしご

昨日の今日で上野へ出向いた。珍しく平日のど真ん中が2連休となったためだが、基本的に正しい生活を心がけていないので、今日も今日とて寝不足はなはだしい。展示を楽しむコンディションとしては最悪のひとつだろう。 1件目は科博。夏から開催されていた「昆…

疑似、浅草体験

駅を降りると東京大学の裏手へ出た。母曰く、かつてはザリガニの釣れるドブ川が流れていたらしいエリアであるが、ちょうどその構内へ入るところの木が派手に倒れていた。先の台風の影響であろう、根がほとんど露出し、脇のフェンスをまでも持ち上げてしまっ…

嵐過ぎて秋の購買

大阪への遠征を果たし、かねての想定以上に優品を購入した私は、今月もう本など買うまいとの決意を固めていた。厳密には、よく行く店に取りおいて頂いている8000円の支払いもあるので気もそぞろであるが、ともかく無駄な出費は控えようと自宅にこもり続けて…

旅ゆけば漫画

大阪2日目。どうにか余裕をもって2泊の旅程を組んだのだが、朝4時に目が覚めてしまうのは普段のガタガタな生活リズムのためであろう。逆に言うと、多少は無理の利く齢のうちに動けて良かったというべきか。 ふだん私は出かけるとき、大抵2つ以上の目的地をも…

ふらふらの大阪

シュミテンが終わるや否や新幹線で大阪へ向かった。用事自体は翌日だったので、この日はホテルへチェックインしておしまい、でもよかったのだが、せっかくならと古本屋へ。 先輩方の多くからご推薦いただいた「文庫カイ」である。以前よりツイッターで存じ上…

しんどいシュミテン

雨、となれば比較的すいているように思われたシュミテンだが、私自身が電車の遅延に巻き込まれてはどうしようもない。ふだん使わないバスを利用したことも相まって、会場入りはギリギリとなってしまった。荷物を預けてのち、列の後ろのほうへ並びなおす経験…

マドテン

雨で出足が鈍いかと期待していったのだが、そんなことはなかった。涼しいというから少ししっかり目な格好をしていったのも裏目に出、会場はひとが多いのもあって汗を滴らせることとなってしまった。 シュミテンではないから、という理由がどこまでの漁書家に…

芳年を見る

下等遊民として古本にまみれた生活を送っていることは言うまでもないが、それだけでは書架が横溢されるばかりで居住空間の確保が危ぶまれてきてしまう。といってアウトドアな趣味があるでもなく、休日はどう過ごしているのかというと、ツイッタ等の情報収集…

署名本過多

この頃本を買いすぎている。優品が目の前に現れたとき、それが買える値段であるのに見過ごすのは男ではない。これが千載一遇の好機とばかりに、迷わず清水の舞台から飛び降りるのが蒐集家の本懐ではないか。とはいえその好機が立て続けに起こると、さすがに…

式場隆三郎『肉体の火山』

山雅房 昭22年7月15日 多様な活動が知られている式場隆三郎は、小説まで残している。 本書の目次は以下のとおりである。(括弧内は頁数、旧字は新字に改めた) 春に散りぬ (5) 肉体の火山 (30) 痣のあるヴイナス (44) 日本とらんぷ譚 (68) 赤門恐怖症 (93) …

台風一過

ここ2日ほどは暴風雨を警戒してロクに出かけられなかった。といって、特段外出の予定があるでもないが、それでも自由が利かないことそれ自体にフラストレーションを感じる。 思ったほど台風の影響を受けなかった関東。ようやっと雨も収まったので行きつけのS…

ついでの収穫

所用で神保町へ行くと、この日はガラクタ市なる古書展が催されていた。半年に1回しか開催されない、レア度の高めな即売会である。近代文学の本がまずまず拾えるとは認識していたが、なかなか覗く機会がなく、今日が初参戦となった*1。 といっても2日目である…

志賀直哉『暗夜行路』

恥ずかしながら、国語便覧に乗っているような名作でも未読のものはたくさんある。そのうち代表的なものが志賀直哉の『暗夜行路』で、その長さから「まあ読めなくても仕方ないのではないか」という無礼な気持ちを抱かぬでもないのだが、仮にも志賀直哉好きを…

武者小路実篤『無車詩集』

武者小路実篤の『無車詩集』自体はさして珍しい本ではない。元版の函付きだけでなく、ただ手に取りたいだけなら近代文学館の復刻も出されているため、入手は容易であろう。 と思っていたところ、この本に愛蔵版なる小数部――具体的には30部限定の愛蔵版が存在…

出遅れのシュミテン

マドテンもさることながら、シュミテンにおける朝の混雑には辟易する。といって、私もその人混みの構成要員であるからして、天に唾を吐くのは止しておこう。 いつもより少し遅れて9時半すぎくらいに到着すると、ふだんなら会館前に蜷局を巻いているオジサマ…

古書展の書き方

古書即売会*1には、だいたい月イチで通っている。実際、神保町の古書会館ではほぼ毎週開催されているのだが、私が必ず足を運ぶのはシュミテンとマドテンの2つだけだ。近代文学の蒐集をやるにはこの2展がおすすめ、と初めて聞いたのがどこだったか、いまとな…

若き蒐集家、記録をつけ始める

いちおう古本の蒐集家である。「いちおう」というのは、本格的な蒐集を志しだしてから2年ばかりしか数えていないことによる謙遜だ。 「古本を買うのが好きなんです」と言ったときに、「じゃあブックオフとかよくいくの?」と返答が来ればその相手は古本者で…